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2025年7月「加速するデジタル社会」に対応した 情報通信環境整備への提言

公開日 2025年09月24日

更新日 2025年09月30日

1.はじめに

 我が国は、コロナ禍で、在宅勤務や在宅授業等により、インターネットのトラヒック(通信量)が大幅に増加した。この傾向は、これからの「加速するデジタル社会」においてもテレワーク、オンライン会議、遠隔教育などに加え、AIなどの活用によりインターネットトラヒックは更に増加する。

 集合住宅では戸建て住宅と比べて通信速度が遅くなるとの指摘が多くなってきた。集合住宅においては、光化にあたり大規模な配管工事、費用負担や建物の美化等の理由でオーナー等の導入意向が少ない。また、集合住宅の居住者の合意を取る必要があるといった課題もある。

 また、宅内のWi-Fiに関しては、古い方式のルータや無線の干渉、ルータの場所等を要因として通信品質が影響を受けるとの指摘もある。
 このような利用者のインターネット接続環境について、集合住宅のVDSL方式や古い方式のWi-Fiルータが通信速度のボトルネックになる。集合住宅の光配線化や宅内Wi-Fiの最新方式化等の取組が喫緊の課題となっている。

2.提 言

2-1. 提言の問題意識

(1) 通信サービスの高速化・多様化

・通信インフラの動向

 通信キャリアは、2000年以降ブロードバンドサービスとして、固定系では光サービスを展開し、100Mbps、1Gbpsから2020年以降は10Gbps時代へ突入した。移動系サービスでは、2020年以降、5Gサービスを全国展開し、4Gサービスの20倍の最大速度20Gbpsを提供する。ブロードバンドサービスの高速化は、今後もネットワーク需要の高まり、ユーザニーズの高度化と相まってさらに進展する。
 将来のAI/省電力GPU基盤/データセンターのインフラとして、APN(All Photonics Network)の研究開発が進められている。当面の適用は、基幹伝送路、データセンターとなるが、将来的にはEnd to Endのブロードバンドサービス基盤に展開するであろう。
 固定電話のインフラを担ってきたメタルインフラは2035年を目途に縮退し、電話サービスから高速ブロードバンドサービスが光ファイバや移動体ネットワークで提供される。

・通信サービスの動向

 テレワーク・映像系サービスに加え、クラウド・AIなどの利用拡大により、トラヒックは5年間で3倍に増加している。固定系ブロードバンド契約者は5000万件と移動系の2億1千万件の1/4に満たないが、固定系の総ダウンロードトラヒックは移動系の5倍に達する。今後、固定系、移動系ともに高速ブロードバンドインフラとして拡大し、トラヒックに占める固定系の比重はさらに高まる。

(2) 光ファイバーのSDGsへの対応

・省エネルギー効果

 円安、原油高等を背景とした環境変化のなかで、光ファイバーの優位性と、省エネルギー効果が高い点に着目し、SDGs「Sustainable Development Goals(持続可能な開発目標)」に即した内容を提言する。

・コスト削減効果

 電力消費の多いデータセンターや半導体工場等の建設等進んでおり、電力のさらなる増加が予想される。膨大な電力需要増加は生活や企業活動にも影響を与えることから電力コストの要因も提言する。

・銅等の価格上昇

 銅の需給バランスが崩れて価格の高騰、さらなる上昇も懸念され、電力業界、情報通信業界等等にも大な影響を与える要因となっている。

1)電力の送電は銅から他の材料、部材への代替は困難
2)通信網は、通信速度、品質等から光ファイバーへ置き換えで優位性確保
3)光技術でサーバー、通信機器等の省エネルギー化することも重要課題

等SDGsやコスト面も含めて光ファイバーの普及への要因として提言する。

(3) 光ファイバー活用による保守運用の高率化

・メタル配線のデメリット

 地球温暖化に伴う落雷・豪雨等に伴うメタル配線への落雷により配線及び接続機器への被害も多発している。情報通信は生活基盤の重要インフラであり、社会基盤のセーフティネットと位置付けられる。
  銅線から落雷等への影響の少ない光ファイバーへの展開を推進する。

・人材不足への対応(配線工事、メンテナンス等)

 配線工事やメンテナンス等で比較的対応等の少ない光ファイバーに代替することで工事やメンテナンス作業の軽減になる。これは深刻化する人材不足への対応となり、より重要な工事やメンテナンスに人材の振り分けが可能となり顧客サービスへの向上に繋がる。

2-2.「加速するデジタル社会」への通信環境整備(提言)

(1) マンション等の集合住宅の通信環境を評価する認定(認証)制度

 一般社団法人次世代構内光ネットワーク整備機構として、関係省庁、関係機関に働きかけ、G-Linkマーク(グッド・リンクマーク)【仮称】を創設を提言する。
 構内光の普及に向けて、当機構として関係省庁等と協力してマンション等の集合住宅の通信環境を評価する認定(認証)制度を制定し、マーク保有物件は高い情報インフラの評価が得られるようにする。
 また、会員企業と連携し、次世代の光ネットワークにも考慮し、構内のネットワーク配線の標準化に向けた指針、基準、ガイドライン等を定め、適正で汎用性が高い構内の配線が施工され、エンドユーザーに高品質な情報通信環境を提供できるようにする。

 標準化をベースに啓蒙普及を行い、認定(認証)制度にも普及・活用を促進する。さらに、認定(認証)制度の評価が不動産価値を高めることに繋がる仕組みとし、賃貸物件検索タグの検討を行う。エンドユーザーが分譲物件選定時に情報インフラの比較・検討でき情報通信の側面からより価値の高い物件を選べる仕組みとして発展させる。

(2) 新築/既築の工事に対する補助金の設定

 マンション等の集合住宅の新築時の光化、及び適正な配管の設置を図るとともに、工事に対する補助金(助成金)を制度設定することで構内の光ネットワーク構築を円滑化する。

 既築のマンション等の集合住宅は光化の設備、及び配管リフォームに対する補助金(助成金)を設定し、情報通信インフラ整備によりフォームや大規模改修を促進する。
 そのために関係省庁等による補助金、助成金等の問題点を調査し、優遇策の制度化を目指す。

(3) 配管・構内光の設置義務化(指針、ガイドライン)、及び補助金の設定

 配管・構内光化に関しては、建物側に構築義務がなくことからコスト要因となる。「配管」、「光化」だけではなく、「配管+光化→構内光」を必ずセットで検討する指針を作成する。

 新築、既築ともに構内光の設置にあたっては、住戸毎に通信事業者を切り替えられる配線構成を義務化(指針、ガイドライン)を行うことで、エンドユーザーが自由に通信サービスを選択できるようにする。そのために関係省庁等による制度化や補助金、助成金等の優遇策制定を提言する。

(4) 住戸毎に通信事業者を選定できる配線の設定

 MDFから住戸まで住戸数分の光ケーブルを敷設し、MDF室で住戸単位で通信事業者選択、回線の資源、切り替え可能とすることで、エンドユーザー(居住者)が自由に通信サービスを選択できるように提言する。回線や資源、設備の有効利用と効率化、労務費の削減、人手不足対策にもつながる。
 そのために関係省庁等に制度化(指針、ガイドライン等)等を提言する。

(5) 構内配線図面の管理推奨

 既存の集合住宅における光回線の入線に際しての課題として以下があげられる。

  • 入線に際し、既に敷設されている他社線を傷つける恐れがある
  • 既存の配管利用の際は管路が古い、径が狭い、作業スペースが狭い、構造物の改修工事が必要等の問題がある
  • 配線図面がなく導入ルートの確認、調査に時間を要する
  • 作業者の負荷が大きく、経験に依存する 光回線への迅速で、迅速な置き換えを促進するために、構内配管図面の保管・管理のルール化を推奨する。

(6) 光ファイバーの利活用促進(新たなイノベーション、製品開発等)

 光ファイバー網が多くの地域に敷設されているが、「加速するデジタル社会」において、品質に加え光ファイバー網の価値を増すためインフラとして多くの利活用を促進する必要がある。
 光ファイバー関連業界、施工業者、エンドユーザー向けに活用方法と利便性を啓蒙するとともに、新たなイノベーションと製品開発、技術開発等を生む観点からも関係省庁、業界へ提言する。

3.まとめ

 インターネットの通信量は、年間約2割のペースで増加しており電気通信事業者は、インターネットの通信速度、品質維持のため継続して設備投資を実施している。 しかしながら、利用者の視点では電気・水道・ガスに続く第4のンフラとしての意識は低い。
 また、高度情報通信の重要性が高まりに対応した利用者側の環境整備も遅れており、様々なサービスを十分に受けられない現状にある。 次世代光ネットワークを支えるインフラとして、防災・防犯・放送・通信・省エネ等に関わる様々なサービスを提供可能とする利用者の建物内の高度情報通信設備の環境整備する。
とりわけマルチユースが可能な光化の促進が喫緊の課題となっている。その課題解決のため、一般社団法人次世代構内光ネットワーク整備機構は、関係省庁、関係機関と連携し、情報インフラ、サービスとしての次世代光ネットワーク整備を推進するため、『加速するデジタル社会に対応した情報環境の整備への提言』を取りまとめ、提言として公表した。

令和6年度提言書[PDF:4.93MB]

 

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